僕が六本木に会社をつくるまで

僕が六本木に会社をつくるまで

僕が六本木に会社をつくるまで

田中良和さんと77年生まれの世代感覚に興味があって読んでみた.もちろん,彼固有の話として読むべきなのだろうが,どうしても世代論として読んでしまう.まあ,書いている方も世代論としての面白さも狙っているから許せ.
すると,浮かんできたキーワードは4つ.

  • 柔らかなストイックさ
  • 公正さ
  • 多様性に対する身体的理解
  • 楽天

田中さんのストイックな仕事ぶりや自分探しの様子が随所に書いてあるが,そこには真の悲壮感は感じられなかった.どこかでそのストイックさを楽しんでいるところがあるのではないだろうか.アスリート的な感覚なのかもしれない.団塊世代は厳格なストイックさを持ち,バブル経済を20代に経験した40代半ばにはストイックさがない.

次に公正さだが,これは学生時代からネットに触れているとやっぱり身に付く.隠してもばれるということを体感しているから.Perpetual βという考え方にもフェアネスは現れていると思う.これは40代半ば以上には理解できない感覚だろう.情報を隠して権力の源泉とするというアプローチを彼らはとる.

そして3点目.生き方はいろいろあるとか,世の中にはいろいろな人がいる,ということが当たり前の環境で育っている.「大きな物語」が喪失したあとに思春期を迎えているということ.この感覚はネットにたしなみがあり,ニッチな分野の市井の賢人に触れていると増幅されるはず.それに対して40代以上は「べき論」がやはり好きだし,カネや権力といった要因で説得しようとする.

楽天的というのは,企業としての楽天に勤めていたからというのではなくて,「何とかなるさ」という生き方.忙しいときは働くが,休むときは1ヶ月とか2週間も海外に行きオフをとる.規模が縮小することや,現在の評判が長続きしないことに対する不安が小さい.夜の予定が毎日詰まっていないと不安になる人の対極にある.

手前ミソだが,40に近い自分がこの世代に「ぎりぎりセーフで理解し合える」と言ってもらえるのは,20代半ばだったけど,学生として95年からネットに触れていたせいで,こういった諸点が彼らに幾分近いからだと思う.そういう意味では世代論というのは乱暴でなんだが,まあ書いておこう.