Googleの決算書

四半期決算をざっと見るのも4回目.例のごとく規模感をつかむ。
http://investor.google.com/releases/2005Q3.html

  • 9月30日締めの四半期における売上は15億7800万ドルで,前年同期の8億600億ドルから96%の増加,前四半期の13億8400万ドルからは14%の増加.この3四半期での合計売上は42億1900万ドル.
  • また四半期毎の増収率は22%,10%,14%と推移している.仮に第4四半期が10%の増収とすると59億5500万ドルが年商となる.6000億円企業となることは確実.
  • 調子にのって,今後の収益を毎四半期12%増収で予想すると,17億6700万ドル,19億7900万ドル,22億1700万ドル,24億8300万ドル,27億8100万ドル.後ろの4つを足すと94.6億ドルで,次期のFiscal Yearでは,めでたく1兆円企業となる.これは博報堂DYグループと比肩する数字(2005.3).
  • 四半期の売上高と営業利益の関係はこの3ヶ月で売上高15億7800万ドルに対して,営業利益が5億2900万ドルで,営業利益率33.5%.これは前期の35.2%から微減.
  • 当四半期の純利益は3億8100万ドルで,前年同期の5200万ドルから633%の増加.つまり7.3倍.前期は四半期ベースで344%の増加であった.この3四半期で10億9300万円.なので,年間で15億ドルには届くであろう.
  • つまり60億ドルの売上に対して,15億ドルの純利益!.媒体枠を勝手に人々が作ってくれることによる売上増加と自動化による低コストオペレーションのたまもの.一方で,営業利益率の横ばいが気になるが,調べるのはやめておく.
  • 売上高の56%に相当する8億8500万ドルがGoogle-ownedサイトからのもの.前四半期から20%の伸び.四半期ごとの伸び率は24%,12%,20%なので,前期の12%がやや低かったと見るのが妥当か.
  • パートナーサイトの売上は,全体の43%に相当する6億7500万ドル.全市半期から7%の伸び.四半期ごとの伸び率は19%,8%,7%.
  • これまで,AdSenseの売上がAdWordsの売上を下回るというのが,感覚的に腑に落ちなかったのだが,ここ半年の現場ヒアリングで納得できるようになってきた.たしかにAdSenseCGMサイトの運営者から見ると大発明だが,やはりAdWordsの方がマーケットは大きいし,中堅企業の関心は完全にここで,現時点での成長性高い.AdSenseの売上伸び率はむしろもっと遅れて高くなるのだろう.というよりも伸び率の推移ではなく,この3ヶ月でAdSenseによって個人などのサイトからの700億円分の経済価値が生まれ,それが前の3ヶ月よりも50億円増えているということが驚異である,と理解すべきなのだろう.
  • このパートナーサイトの売上のうちパートナーに5億3000万ドル支払う.これは前四半期の4億9400万ドルから7%の伸び.売上の79%に相当.前四半期の78%からは丸めた数字の誤差の範囲で変わっていないとすると,AdSenseに関する基本的なルールは変わっていないと思われる.
  • 新たな観察項目としては,US以外の売上が39%で,前四半期の35%から上昇.
  • 資産の部を見ると3月31日の38.65億ドル,6月30日の44.98億ドル,9月30日は94.51億ドルへと約50億ドルの増加.Property and equipmentだけについて見ると,3月31日が4.75億ドル,6月30日が5.77億ドル,9月30日が8.03億ドル.つまりこの四半期では250億円分の増加で,売上は800億円以上増加.

いやはやすごい会社です.という経営学的な観点もそれはそれでたのしいのだが,ユーザー発信情報の価値を広告というビジネスモデルで内部化するという話は,ネットワーク社会論の観点から見るとやっぱり問題があるようにも思う.もちろんこの流れは不可避で受け容れるしかないのだが.

広告(アフィリエイト含む)モデルという責任(=自由の裏返し)転嫁の仕組みの確立が,情報社会の二層構造(GLOCOM 「地球智場の時代へ-情報社会学シリーズ- 」(情報通信ジャーナル連載): 第9回 : ポストモダン 情報社会の二層構造)を推進しているわけで.

ということで,現在の私の関心は,ユーザーが付加価値をつけたDBが連結してWebサービス化が進むことによる社会変容に向かっています.ここまでは,ここ2年ではとーてい扱えないので,とりあえずミクロの経営学の観点からDBのAPIベースでの開放による,経済的なメリット・デメリットについて実証データを基に論じたいと思っています.これもリサーチャビリティのことを考えるとなかなか大変なのですが,最近は学位の確保よりも楽しいことを優先するようにしようと考え方を変えました.ここまでまとめて,大きな課題を考える上でのアセットとしたい.