25歳のシェフ

どういう縁かは知らないが、母が自分の家に25歳の在仏日本人シェフを呼んで、クリスマス・イヴに食事をしようというという話になったのは12月に入ってからだったと思う。

彼はフランスのロワール地方のChenonceauxにある、Hotel restaurant Le bon laboureurというレストランでシェフを務める杉本敬三という人。そして5年間の修行を経て、この2月にこれまたロワール地方のVilandryという村で店を開く。というわけで一区切りついたこの年末年始は一時帰国していた。

食べたのは以下の品々。

  • フォアグラのソテーを合鴨で包んだアペリティフ
  • 薫製うなぎとフォアグラと豚とキャベツのテリーヌ
  • フランス・デュ・ピュイ産のレンズ豆のスープ、青森産天然アワビの肝和え
  • フォアグラと猪のプレッセ、イチジクのコンポート添え
  • 青森県陸奥湾産の帆立貝のさっとソテー、レモン風味のバターソース
  • 小鴨のクロワゼの蜂蜜風味、そのもも肉のキャベツ包み、苦いカカオ風味のソース
  • パイナップルのロースト、ココナッツ風味のエミュルッショネ
  • イチゴとホワイトチョコレートミルフィー

一番おいしかったのは、薫製うなぎのテリーヌだった。やや歯ごたえのあるキャベツがはさまっているのが絶妙で、うなぎやフォアグラなどの柔らかい食材にアクセントを加えていた。

またレンズ豆のスープも秀逸。僕は単品のアワビというのはそんなに得意ではないが、エリンギとともに非常に調和しており、非常においしく食べられた。

さらに帆立貝のソテーのソース。フランス料理にはつきもののバターを入れながらも、さっぱりしたソースというのが彼のひとつのこだわりのようだ。レモンの皮を煮込んで香りをつけたようで、しっかりとした風味ながらさっぱりという感じ。帆立も肉厚で美味。

ワインも彼がインターネットで見つけたくれた物だが、イスラエル産のワインというのははじめて飲んだ。白は、私の好きなPuligny Montrachetに似た深い味わいで美味しかった。他の2本の赤は、かなり濃密でCastelは、私にはコクがありすぎてほとんど飲めなかった。

さっぱりソースのおかげで、とんでもない皿数と量をこなしたが、個人的には猪が余計だったという感じ。さすがに最後の小鴨はかなり苦しみながらの食事で、どうしても苦いカカオのソースが、重たいワインとともにちょっと辛かった。あとは鴨という素材を2つの調理法で食べさせるという彼お好みの手法も、実は腹が張っていたせいでちょっと辛かった。

ソースは別として、どれもしっかりした塩味の利いた古典的なフランス料理という印象だった。これは日本で店を開くならという仮定だが、だとすると、もう少し軽めのぼやけた味付けの方がウケがよいように思う。量も減らし加減が良いだろう。まあ、これは食材の原価が日本の方が高いから自ずと減ると思うが。

彼はとても25歳とは思えない、存在感と自分の言葉を持っており、料理もさることながら、彼との会話や料理談義やフランス談義は非常に楽しめた。2007年頃にでも彼の店を訪ねられたらと思う。