『システムの科学』

ハーバート・サイモンの同書。第3版。

一番感銘を受けたのはこの行。

「われわれの行為の本当の結果というものは、次回以降の諸行為のために初期条件を設定することなのである。われわれが「究極」目的とよんでいるものは、実は、われわれが後継者に引き渡す初期条件選択のための判断基準にほかならないのである。われわれはこの世の中を次の世代の人達に、どのように残したいと思っているのであろうか。彼らにとっての良い初期条件とは、いったい何なのであろうか。望まれるものの1つは、元に戻すことができない不可逆的な介入を避けながら、しかも将来の意思決定者に可能なかぎり多くの代替案を与えうるような、そういう世界であろう」(p.197)。

自分のフィールドの広がりを読者に説得的に語る必要性は依然残るが、科学者としての活動を社会の中に位置づけることの意味と、気張らずに後世のためにできることを積み重ねて行けば良いという安堵を同時に感じさせてくれた。