企業の力は「くやしい」の関数?

科学的な根拠のある話ではないが、こんなことを考えてみた。

いくつかの大企業のトップマネジメント・コンサルティングを経験した。成熟産業にありながら、そこそこの復調を見せた企業もあるし、独自の強みで成熟産業の中で成長している企業もある。逆に安定というか停滞という感じの企業もあるし、成長産業の中で産業全体ほどの恩恵を得ていない企業もある。

実は一番、脆弱なのは「成長産業の中で産業全体ほどの恩恵を得ていない企業」ではないかと最近考えている。というのもこういう成長産業においては得てしてポーターが言うような組織外部における構造的優位性は作りづらい。にもかかわらず、成長産業ということで人材は集まる。が、骨のある人材がいない。バーニーがいうところの組織内部の競争力がないというやつだ。

こういう会社の人は経験的に、「くやしい」と思ったことのない人種が多いのではないか。産業全体が伸びているからなんとなく採用されて、なんとなくものを売って、なんとなく会社に行っている人が多い。つまり背伸びをしたこと、あるいは背伸びをして失敗して「くやしい」と思い、捲土重来、敗者復活という経験のない人の集まりだ。不用意に怒ると「くやしい」と思う前にキレてしまう20代もいるけれど、こういう会社は30代も「くやしさ」を経験したことのない人種が多い。

こういう「くやしさ」を敬遠する人種に対して、まともな分析をして指摘をすると「逆上する」か「知って知らぬふりをする」かのどちらかだ。いずれにせよ、提言は真摯には受け止められない。そういう会社は危ないと思う。