電通とGoogle

Googleはどんな会社を買収するのか - My Life Between Silicon Valley and Japanでは,

YahooはFlickrを買ったし、Ask JeevesはBloglinesを買った。けれどGoogleは、そういう会社を買うことはたぶん一度も考えたことがないだろう。そんなもの、必要なら自分たちですぐに作れると思っているし(たぶん作っているだろうし)、そうすべきだと考えているに違いないからだ。だからGoogleTechnoratidel.icio.usを欲しいとは思わない。電通なら欲しいと思うかもしれない。

と書かれている.
他にも
Googleが技術雑誌の広告ワクを再販 - 広告代理店事業への布石か - モジログ

Googleはおそらく、広告代理店事業に進出しようとしているんじゃないだろうか。

こうなると、Googleはもはや、Microsoft(技術)やYahoo!(サービス)などと競合するだけではない。日本でいえば、電通リクルートなどとも競合になってくるのではないか。

と書かれている.

電通という会社を10年前に辞めたときに考えたことはこうだ.

この会社は媒体と広告主のニーズをマッチさせることをやっている.広告主の数はそれなりに多いけど(当時3000社と言われており,約3500人の営業マンが担当していた),媒体の数が限定的(媒体局員は400人程度,私がいたラジオ局は50人だった)だから,組合せはなんとかなる数で,人間がそれをやっている.またこの媒体の数が限定的だからこそ,競争優位性を持っている.

ところが,インターネットは無尽蔵にサイトが出てくる.

果たしてこの媒体に対して,この会社はどれだけ広告主のニーズをマッチさせることができるのだろうか.

当時の私が出した結論は「できない」というものであった.そしてネットというメディアが長期的には伸張することと,当時のマスメディアの仕事がつまらなくて,ネット側に移ることにしたわけだ.

でも結果的には,私の答えは間違っていてGoogleには「できた」んだな.

ちなみに電通にも一応できている.無尽蔵にサイトはあるが,マス型のサイトはまだ数が有限だからだ.でも関連社員はかなり疲弊しているようだ.昔のようにネットスポットを全ての局に流すというようなプランニングはありえないから,売上小さく,手間は大きくなっている.一方のGoogleはTailの部分で,それも機械じかけでマッチングさせた.

今,考えて,当時の私の思考の枠と何が一番違ったかと言えば,私は視聴者や読者と広告主のマッチングということを考えていた.つまり誰が見聞きしているのか,あるいは読んでいるのかということの捕捉という問題を考えていた.ネットレイティングスの発想.

ところがそうではなくて,Googleは「コンテンツ」を基に広告主とのマッチングを図った.Pay Per Clickというビジネスモデルも秀逸でそれゆえ誰が見聞きしているかについては広告主もそんなに気にしない.

一方,膨大な広告主自らに出稿の意思表示をさせるという点については,当時,ネットとボランタリズムの問題にすでに私は興味を持っていたから,そうなるんだろうと思っていたけれど,コンテンツを介して全て機械で広告主をマッチングという発想はなかった.

Google電通を買うということについてどう思う?」とマス媒体の仕事をしている電通社員に聞いたところ,「なんだそれ」という反応であった.少し説明するとわかったようであるが,「アメリカの会社を買うんじゃないの,まず」とのこと.

なんだが,アメリカの場合,メディアレップとエージェンシーは機能分化していて,垂直統合的に多くの機能を持っている単一の会社としては電通が売上規模としては,世界で一番大きい.日本ではオーバチュアに比べてGoogleは営業力がないと聞くから,まあ,そのうちあるかもしれないな.買収.時価総額は8700億円と半分で4000億円強だし.