ファシリテータの必要性

今週ORF2004という大学の研究発表会に参加したが、痛感したのは「ファシリテータ」の必要性である。

ファシリテータというのはfacilitate:〈事を〉容易にする,楽にする,促進[助長]する というような役割を演じる人である。前にいた会社ではfacilitaion skilというのをものすごい大事にしていて、研修でも現場でも鍛えられた。日本語としてはモデレータ(議長役)、コーディネータ(調整役)の方がなじみがあるのかもしれないが、やっぱりファシリテータなのである。

もう少しわかりやすく言うと、Aさんが言っていることや取り組んでいることを、門外漢に説明する時に、「それってこういうこと?」「それって○○と同じことですよね」と適切な比喩を交えながら言語化してあげて、門外漢の理解を助けるという役割だ。あるいは現場の専門家の悶々とした想いを少し抽象度をあげて本人のために言語化してあげる役割という言い方もできる。

経営コンサルティングの場合は、大体現場の人がいろいろしゃべる中に答えがあることが多い。だから「それって○○ですよね」と言って「そうだね。確かに似ているかもしれない」と相手が言ったらかなりしめたものだ。「 ○○はこういう理屈で動いているのだから、ここを変えないとこの問題は解決しないですよね」と会話が進んでいく。すると現場の協力が得られる。また経営者にこの比喩がばっちり共感されてしまうと、数千万円のお金が動くことになる。

このスキルがすごいのが、やっぱりコピーライターなのだ。私は糸井重里と話をする機会がかつてあったが、彼のこの能力はずば抜けていた。「海馬」海馬/脳は疲れない ほぼ日ブックスを読めばその片鱗が出ている。またきっと「経済ってそういうことだったのか会議」経済ってそういうことだったのか会議を作り上げたCMプランナーの佐藤雅彦にもそんな才能があるのだろう。

さて、話を戻すと、学際的な研究をやるとしたら、しかもそれを実践として社会にきちんと落とし込むとなると専門家同士をつなげていくことが必要になる。また現場の人を巻き込んでいくことも必要となる。その時に求められるのがファシリテータなのだ。

知っている人は、私が、人と人をつなぐだけしか能のない、専門性のない男であることへの言い訳を書いていることに気づくだろう。が、とはいえ、このスキルをもう少し磨いてそれを専門とするぐらいを目指してやることには、それなりの意味があるということの再認識が実は今回の一つの収穫であったのだ。